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俳句と本源

 数学者の岡潔先生が仰っているのですが、寺田寅彦先生が当時の松山高校に在学だった時、夏目漱石先生が教壇に立っておられた。その時に漱石先生の家に行って質問をしたのです。

 「俳句とはどんなものなのでしょうか」

すると、漱石先生は、

「しぐるるや黒木つむ()の窓明り」(凡兆)のようなものであると答えたのです。

 しぐれの音無き雨音が聞こえるようではありませんか。そして雨にしっとり濡れて黒くなった薪に窓明かりと、なんともいえない懐かしさが感じられませんか。

 源に逢うということはこういうことではないでしょうか。そこに趣を感じる。

 

 本源は宇宙を貫く。ですから自分も含めて全てのものを貫いています。ですから、本源に出くわすと懐かしさが呼び起こされるのだと思います。