坐禅儀提唱(二)


「その飲食( おんじき )を量りて、多にあらず少にあらず、その睡眠を調えて( せつ )ならず、 ( )ならず」

 坐禅する前に食べ過ぎてもいけないし、少な過ぎてもいけない、睡眠は削ってもいけないし、たくさん寝ても駄目だと。この通りですが、いつでもこういうことができるかどうか。

 お母さんが赤ちゃんを育てる時に、自分の食事が十分とか、少ないとか、睡眠が十分、不足などと言っていませんね。どんな時でも赤ちゃんのことを思って自分のことなど忘れている。仕事でも何か大きなトラブルが起きれば、無関係に対応する。ここは、その食事の量について多とも少とも思わず、多ければ多いなりに、少なければ少ないなりに坐禅に立ち向かう、本参の話頭に参じる。睡眠も同じで、睡眠が少なければ少ないなりに、坐禅三昧、そうやってくれよと、読んでも良いのではないでしょうか。一人で坐るときは特にそうです。「眠いから明日の朝にしよう」、朝になったら、「眠いから夜頑張ろう」と、そんなことではどうしようもないということです。

 

「坐禅せんと欲する時、閑静の処において厚く坐物を敷き」

 大森老師も「わざわざ喧騒の中で坐ることはない」と「参禅入門」に書いていらっしゃいます。大燈国師が京都の橋の下で悟後の修行をされた。でも、初期の段階で、わざわざそのような所を選んで坐禅する必要はありません。家でもやはり、静かな時間帯に坐るのが良いと思います。そして、坐物についてもうまく調節しないとなかなか難しいということです。

 

( ゆる )衣帯( いたい )をかけ」

 これはきつく縛りつけず、そうかと言って緩すぎても良くない。うまく調節していただきたいと思います。

 

威儀( いぎ )をして( ひと )しく整えせしめ」

 威儀とは、服装です。袈裟をつけるのか、絡子( らくす )をつけるのか、出頭の衣にするのか、雑衣にするのか、作務着にするのか、色々その時、その場に即した威儀があります。家で坐禅する時は坐禅するに適した服装にして、それなりに身を引き締めることが必要だと思います。

 そして威儀を拡大解釈して行住坐臥、一日中の立居振舞いということまでと、考えてみると、坐禅する時だけではなくて坐禅の前後も、坐禅中と同じように整えなさいということになります。動静無間と同じだと思います。僧堂では十五分前安単( あんたん )といって、定められた時間の十五分前から坐を組みます。その時も止静と同じで一切動くことは許されません。また、二便往来( にべんおうらい )がかかった場合には二便往来しかしません。二便往来中にちょっと体をほぐすとか、ストレッチなどをすることはしません。勿論、話をすることなどありません。五分ほどで二便往来を済ませ服装を整えてすぐに十五分前安単します。全くゆるみが無い。それが規矩です。これも広い意味で威儀を整えるということだと思います。このように前後間断なくするということです。鉄舟会でも十五分前安単を励行していただくようにしております。

 

「しかるのち結跏趺坐( けつかふざ )して、まず右の足をもって、左のももの上に安ぜよ。左の足を右のももの上に安ぜよ。あるいは半跏趺坐( はんかふざ )は又可なり。ただし左の足をもって、右の足を圧すのみ」

 坐禅の基本は結跏趺坐です。しかし、長時間坐る時に結跏で通していくことが難しい場合は、足の組み換えとして半跏趺坐をしても良いということです。そしてまた結跏趺坐に戻します。結跏ができないからズット半跏でも良いということではありません。しかも、結跏趺坐の場合の足の組み方はこう、半跏の場合はこうと厳密に書かれています。結跏と半跏では足の右左が逆になっていることに注意してください。結跏趺坐の方が座骨の安定、両膝の安定が良いと思います。その結果、丹田への集中もやり易いように思います。結跏趺坐が一番定に入りやすいというのは慣れてくるとよくわかります。半跏趺坐の時にも、足を腿の付根にグッと持ってくることです。そうすることで結跏趺坐に少しでも近づけることができると思います。しかし、余計な力を入れることが最も問題ですので、身体が慣れないうちは楽に坐れる足の組み方を自分で見つけてください。そして少しずつこの坐禅儀に書かれているようにしていってください。

ここは、サラッと言いましたが大変重要なことです。

 

「次に右の手をもって左の足の上に安ぜよ、左の掌を右の掌の上に安ぜよ。両手の大拇指をもって面に相支え」

 これも非常に大事なことです。これは法界定印( ほつかいじよういん )のことです。直日(じきじつ)は何を見て警策( けいさく)を振るうかというと、大きく三つあります。

 一つは姿勢です。これは明らかに分かりますね。二つは目です。

半眼、活眼を問わず眼が閉じているのはだめです。これは坐禅儀の後段で説明されていますので、後で詳しく説明します。そして最後は手です。法界定印は円相を作るようにして組みます。結手でもなんとなく組むのではなく、そこに円相が出来る心持で組みます。ボーットしたりすると直ぐにこの円相が崩れます。直日はそこを見て、直してあげるということが大切です。警策を振るう必要もあると思います。自ずと気が丹田に集中してくると円相になります。手は、その人の坐禅が禅定( ぜんじよう )状態に入っているかどうかを明確に物語っています。自分でも崩れたら直し、崩れたら直しと赤子を守るように大切にすることが重要だと思います。

「禅宗四部録 坐禅儀提唱」(平成三十年十二月一日 提唱を抄録 鉄舟会齋藤)